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オランダ カナダ アメリカ 海外教育の最先端視察報告会 まとめ @セシオン杉並 [オランダ教育/イエナプラン教育]

オランダ、カナダ、アメリカの教育視察報告を受けてきました。スピーカーの3人と会うのはオランダ以来でしたが、みなさんそれぞれの課題を真摯に追求されている姿勢に静かに感動。
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比較は、本来比較することによって磨き合うものであるのだな、と思いました。3人ともとても丁寧に報告をまとめていて、そして自然と支え合っていてそういったところも素敵だった。
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内容について、個人的にも知っていることと知らないことのバランスがほどよく、様々に組み合わせながら考えをめぐらせることが出来たのは幸いなことです。そうこうしているうちにあっという間にディスカッションの時間も終了。

中身について少しまとめたいと思います。

@@@@@@@@@@@

①多様な学校教育とインクルーシブ教育 〜オランダ・アメリカの事例から〜
スピーカー:野口晃菜さん
株式会社LITALICO(旧ウイングル)に所属しながら筑波大学大学院でインクルーシブ教育の研究をされている方。

▷株式会社LITALICO
http://litalico.co.jp/

▼テーマ
①インクルーシブ教育とは(歴史・定義)
②オランダの学校教育(法制度・実際・課題)
③アメリカの学校教育(法制度・実際・課題)

そもそものところとして、インクルーシブ教育は障害の有無にかかわらず、全ての子どもたちを対象としているものだというところを、公的な観点から解説してくれた。
1975年「障害者権利宣言」国連〜2013年 障害者権利条約 日本が批准まで という中から、とりわけウォーノック報告(英)とサラマンカ宣言(国連)が事例。

諸々詳しくはご本人のブログなどをご参照ください。ここではだいぶはしょります。

▷あたし論
http://theoryofakina.blogspot.jp/2012/11/blog-post_8.html

▷インクルーシブ教育wiki
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3%E6%95%99%E8%82%B2

▷ウォーノック報告
http://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_f/F-101/chapter03/chapter03_e02.html

▷サラマンカ宣言
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%A9%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%82%AB%E5%A3%B0%E6%98%8E

このページも比較的によくまとまっていると思います。

▷インクルーシブ教育の国際的動向と特別支援教育
https://www.tulips.tsukuba.ac.jp/dspace/bitstream/2241/107848/1/%E6%95%99%E8%82%B2_741(2007-10).pdf

▼まとめ いただいた資料より引用

・すべての学習者には異なる興味・関心、ユニークな特性、能力およびニーズがあることを前提とする
・特別な教育的ニーズのある子どもを排除しない(特別なニーズのある≠障害のある)
・特別なニーズのある子どものみの教育改革ではなく、教育全体の改革
・インクルーシブ教育はプロセス

引用おわり


▼オランダ事例
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▷オランダの教育制度ざっくりまとめ
http://josnederland.web.fc2.com/NLonderwijs.htm
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オランダ社会・教育について詳しく知りたい方は、
▷リヒテルズ直子のオランダ通信
http://hollandvannaoko.blogspot.jp/
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▼全体像
オランダには多様な学校教育があるとするが、特別教育に関しては通常教育と別々に発展した経緯があると解説。特別支援学校の人も希望があれば普通学校に国からの資金をもって通うことができる。2003年、中度〜重度の障害のある児童生徒を対象にしかれた政策。これらの障害をもつ生徒達は基本的に特別支援学校に通う。(通級指導教室・支援学級はない)
著者が少し補足させていただくと、最近では国の教育にかける財政も厳しく、ある地域でまとまった支援金を渡し、そのなかでなんとかやりくりしてもらう、という形にもなっているそうだ。しかし、各学校にそういった生徒達をサポート・バックアップ・管理するスタッフは若干名配置されていたように記憶している。(確証あるメモが手元に今ないので、ちがっていたらフォローをお願いします)
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(写真とは別に特別支援学校がある)

▼まとめ 「可能性」と「課題」を資料より一部引用。
・多様な「教育観」の選択肢
・多様性を前提としたインクルーシブな教育システム
・障害のある児童生徒は選択肢がない
・自由さがある故の不自由さ
引用おわり

学校ごとの裁量権が強く認められいるので、国での統一的な支援がしづらいのではないかとまとめられていました。

以前私自身がユトレヒト大学に在籍していたときに、重度の生徒達は特別支援学校に通うのが一般的でよいだろう、という話を聞いていたので、野口さんも言っていたように障害をもつ生徒の選択肢の幅は意外に少ないのかもしれない、という印象を思い返しました。オランダの教育関係者からもそういった課題の声もありました。
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▷この資料も参考になるかもしれません
http://www.kyoiku-soken.org/official/activity/userfiles/document/%E3%82%AA%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%89%E3%82%A4%E3%83%84%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E5%A0%B1%E5%91%8A%E6%9B%B8.pdf

▼アメリカ事例
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アメリカは州によって教育システムが異なることを説明されていた。
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▷アメリカ合衆国の教育
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E5%90%88%E8%A1%86%E5%9B%BD%E3%81%AE%E6%95%99%E8%82%B2

▼全体像
今回の視察は初等・中等学校5840万人のうちの12%にあたる私立学校(9%)と公設民営学校、いわゆるチャータースクール(3%)に焦点をあてたとのこと。

その中でとりわけ、学力格差を減らす、スタンダードに基づく教育から学校種と最先端教育について発表。

▼テーマ
最先端教育としてピックアップされていたのは、資料より引用すると、
・ブレンデッド学習
・イノベーションラボとデザイン思考
・社会性ー感情学習
ICT活用による個別か教育
社会とのつながりのある教育スタイル
引用おわり

▷ブレンド型学習
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%89%E5%9E%8B%E5%AD%A6%E7%BF%92

▷デザイン思考
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%82%B6%E3%82%A4%E3%83%B3%E6%80%9D%E8%80%83

訪れたのがサンフランシスコということもあり、シリコンバレーも近く、こういった学校もあったとのこと。
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要点だけ資料の引用からまとめさせていただくと、
・ICT活用による個別化教育
・社会とのつながりある教育スタイル
・教員とICTを組み合わせることで個別ニーズに応える教育
・多様な価値観を持つことが正しい

詳しくは後述の安原さんに、ということで概要を簡易にまとめられていました。

▼まとめ
最後にということでまとめられていたのが以下の4点。資料より引用します
・多様な教育の形があるが、それぞれには限界がある
・一つの教育スタイルで全ての子どものニーズを満たすことは困難
・多様な選択肢を公的な機関として提供する
・国として最低限担保する教育の質の定義
引用おわり

生態系としてのインクルーシブ教育システムという言葉が印象的でした。
つまりは教育全体が変わっていかなければ、インクルーシブの根本も変えていけない。

▼感想
よくある「教育全部がかわっていかなきゃ」論ではあるのだけれど、視察報告ということでざっくりとではあったものの、非常に丁寧にまとめられていたこと、またインクルーシブ教育視点から教育をマクロに捉えて未来を見据えたことには大きな価値があると思います。また個人的にも知っている人であり、この人はやる人だという確信もあるから価値が生まれるものでもある。
教育を変えていく仲間として、以下のお二方もそうだけれど、とても心強い気持ちになりました
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次に、実際の順番は③の小澤さんが先でしたが、まとめの都合上変更させていただきます。

@@@@@@@@@

②テクノロジーの活用と教育格差解決へのチャレンジ
スピーカー:安原健朗さん
同じくLITALICOに所属しながら一児の父

▼テーマ
・アメリカ ロケットシップ教育 Rocketship Education
・オルトスクール Alt School

▷Rocketship(サイトは英語です)
http://www.rsed.org/

資料の引用より少しまとめると、
・Rocketship Educationは低所得者層の子供(5~12歳)の教育格差の解消を目的に2006年に設立されたチャータースクール
・同程度の経済状況の子供たちが集まる他の学校と比較し、かなり高い学力スコアをあげることに成功している
引用おわり

▷チャータースクールwiki
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%BC%E3%83%AB

▼ロケットシップ教育全体像
このロケットシップ教育は7年で9校というスピードで成長しているようだ。
低所得者層にフォーカスとあったが、実際、昼食費無料or安価提供を受けている生徒は合計生徒数5000名のうち86%に及び、また、英語を第二外国語とする生徒も70%というデータを提示された。実際の学力評価もAPIの方式でも800点超えの学校が5/7校。2校は新設されたばかりでデータは出ていないとのこと。

▼教育内容の特徴
Ⅰ Blended Learningという学習モデルを開発実践

▷詳しくは↓ 上記ロケットシップページ内解説
http://www.rsed.org/Blended-Learning.cfm

要約すると、
①集団指導 Large Group Instruction
②小集団指導 Small Group Instruction
③個別指導 Targeted Intervention
④チーム学習 Team Learning
⑤オンライン学習 Adaptive Online Learning
(+Enrichment 体育や芸術といった科目)

イラスト付きでrotation modelなども上記ページにあるのでそちらがわかりやすい。
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これらをローテーションさせながら5つの学習スタイルをシステマチックに組み合わせて提示しているようだ。またスピーカーの解説によると、オンライン学習については、Rocketship Tutorと呼ばれる専任の教員以外のスタッフ(主に大学生など)が担当しているとのこと。全体として非常に若々しいフレッシュな人員で構成されていたとのことだ。

Ⅱ 学習ニーズの分析
様々なことの視覚化やミーティングを重ねている。

Ⅲ オンライン学習
中身については既存のものから必要なものを採用し、組み合わせながら使用しているとのこと。

Ⅳ 親の巻き込み
保護者を学校運営へ巻き込んでいくためにいくらか工夫をしいている。
例えば、どの親も年に30時間以上学校ボランティアが必須/学校運営会議への任意参加/毎週金曜は校長先生とコーヒーセッションなど。
30時間ボランティアということには会場からも質問が飛んだが、実際には家庭で宿題のチェックといった、学外・家庭での活動もそれと認められるようで、今のところはクレーム0で聞くところによれば上手くいってはいるようだ。

▼課題や批判
このように多くの日本人にとってはまだまだ未知の新しいロケットシップではあるが、課題や批判も多いようだ。

批判①学力低下
学校数の急増に伴い、質が追いついていなく、学力が売りでもあるのに右肩下がりであるということ

批判②受験準備批判
テストスコアにフォーカスしすぎていて、全人格的な教育がおろそかになっているのではないかということ。

地域のチャータースクールの方々が立ち上げた
▷Stop Rocketship Educationというサイトもある
http://www.stoprocketship.com/

▼まとめ
Ⅰ〜Ⅳなど、これらのことより、資料から引用させていただくと
「一人ひとりの子どもの学習ニーズ、学習ベースに応じた学習環境づくりを少ないリソースで実現する」
課題「展開スピードを維持しつつ、いかにして教育の質を高め続けられるか」
引用おわり

▼Alt School
▷ALT School
https://www.altschool.com/
AltSchool_Logo.jpg
▼概要を資料より引用
・「School, reimagined.」というモットーで2013年に開校されたサンフランシスコの私立学校
・6〜8歳が対象
・「Aardvak(※2010年にGoogleが買収)」などを起業した元GoogleのエンジニアであるMax Ventilla氏がCEO
・他店舗展開のために33億円の資金調達に成功(学校生徒は現在30人程度ではあるが)

▼教育内容の特徴(引用)
①プロフィールに応じたカリキュラム
②教育界で一番のエンジニアチームを目指す
③スモールコミュニティ(Village)での展開
④学びと実社会の接続
引用おわり

①プロフィールに応じたカリキュラム
「インタビューや観察を通じ、学習者のプロフィールを作成し、個別の学習計画に落とし込んでいく」とある。いわゆる子どもの特性を見極めて多様な学習スタイルから最適なものを選んでいく。学習者プロフィールをベースにして、担当の先生がplay listとよばれる週のタスクリストを作成し、それに基づき、それぞれの子どもが学習に向かう。これらの進捗状況はオンラインで管理できるようになっているそうだ。

②教育界で一番のエンジニアチームを目指す
元Googleのエンジニアが立ち上げたということもあって、最先端のプログラミングを教えられるとのこと。また、ALT Schoolをプラットフォームとして、世界中の教育の資源や情報の集約・発信が出来ることも目指している。

③スモールコミュニティ(Village)での展開(資料引用)
ウェブサイトでは学校のことをvillageとも表現しており、温かみのあるコミュニティーとして子どもを育てることを重視し、学校の規模は小さく、20~80名程度で展開していく

④学びと実社会の接続(資料引用)
実社会の中でたくさんの経験を積むことが子供たちの好奇心をかきたて、学びに対する主体性を引き出すことが出来ると考えている
引用おわり

▼まとめ
①〜④をスピーカーの言葉を借りると、
「’子どもたち’の教育から’その子のため’の教育を実現する」
課題は
「ベテラン教員の経験に頼っている現状で、学習プロフィールの分析と個別学習の立案をいかに属人的ではない仕組みにできるか?」

▼感想
本テーマとあまり関係がないのかもしれないが、チャータースクールはチャータースクール同士で協力・協働し合う環境はあるのだろうか。もちろん批判は相互にあるべきであるが、ポジティブなものも共有していく姿勢が大切であると思う。そこがないかぎり本質的なところを問えば、結局学びは子どもに還っていかないだろう。ただのスクールつぶし合戦で被害を被るのは最終的に地域であり、家庭であり、子どもたちである。批判に対しても勝ち負けでやっているかぎり子どもは見放される。真摯に受け止め合い、対話していく姿勢をもつこと。
ALTSchoolに関しては、もし今後エンジニアから教育に関心を持つものを集めるのであれば、それは初等教育といった分野ではなく、専門学校などの分野に展開していき、その中で時に子どもを対象とするプログラムを展開していくのが良いのではないか。マネーゲームに強いのであれば、CSRとして教育に展開していくことの方が個人的には安心感と有益感がある。しかし、それでも初等教育に展開をしていくのであれば、教育実戦経験の豊かな人を集めていき、その中でバランスをとりながらミッションを進めていってほしい。

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③地域エコシステム 〜違いを前提とした育ちと学びの権利保障〜
スピーカー:小澤いぶきさん

▼テーマ(資料より引用)
・多様な子ども達の育ちと学びの権利について:子どもの権利条約/様々な違い
・トロントにおける子どもの育ちと学びの環境と権利保障
・オランダにおける子どもの育ちの環境
引用おわり

さきに、時間の関係と野口さんのところで詳しく話されていたことから、3番目のオランダについては省略された。

▼子どもの権利条約の発表
20130427.jpg
これらの詳細に関しては各種インターネット情報を参考にしてほしい。
キーワードは提示しておく。

・1922年世界児童憲章
全ての子どもは、身体的、心理的、道徳的および精神的な発達機会が与えられなければならない

・1924年ジュネーブ宣言
▷国連による最初の人権宣言
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%83%8D%E3%83%BC%E3%83%96%E5%AE%A3%E8%A8%80
・1948年世界人権宣言
▷国連が人権として、自由権と社会権の保障を宣言
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%96%E7%95%8C%E4%BA%BA%E6%A8%A9%E5%AE%A3%E8%A8%80
・1959年児童の権利宣言
▷ジュネーブ宣言を拡大。改めて「出生権・生存権・発達権・幸福追求権・教育権・レクリエーション権」を訴える
http://homepage3.nifty.com/naga-humanrights/shiryo1/child-sengen.htm
・1979年国際児童年
児童の権利宣言を世界的なレベルで呼びかけ

・1989年子どもの権利保障条約
▷国連が児童福祉を”条約”として包括的に規定した
http://www.unicef.or.jp/crc/

▼子どものもつ権利と権利の保障とは・・・?
▷以下ユネスコのページより引用
http://www.unicef.or.jp/about_unicef/about_rig.html

「子どもの権利条約」-4つの柱
生きる権利
守られる権利
育つ権利
参加する権利

生きる権利
子どもたちは健康に生まれ、安全な水や十分な栄養を得て、健やかに成長する権利を持っています。

守られる権利
子どもたちは、あらゆる種類の差別や虐待、搾取から守られなければなりません。
紛争下の子ども、障害をもつ子ども、少数民族の子どもなどは特別に守られる権利を持っています。

育つ権利
子どもたちは教育を受ける権利を持っています。また、休んだり遊んだりすること、様々な情報を得、自分の考えや信じることが守られることも、自分らしく成長するためにとても重要です。

参加する権利
子どもたちは、自分に関係のある事柄について自由に意見を表したり、集まってグループを作ったり、活動することができます。そのときには、家族や地域社会の一員としてルールを守って行動する義務があります。
引用おわり

▼まとめ
スピーカーの資料より国際連合「子どもの権利条約」のまとめを引用すると、
「この条約では、18歳未満のすべての子どものための条約です。肌の色、性別、言語、国民的、民族的、社会的出身、宗教、政治についての意見、障害をもっているかいないか、そのほかどんな生活をしているかに関係なく、すべての子どものための条約です。生きていく様々な場面において差別や排除がされないこと、子どもが幸せに生きる権利があることがうたわれています。」
引用おわり

▷児童の権利に関する条約全文(外務省)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jido/zenbun.html

こういった流れから「違いとは・・・」に展開された。

誰にでも出来るだろう、課題が出されたのでそれを少しアレンジし、ここで再現するので、よければイメージだけでもしてみてほしい。
「みなさんの頭の中(或いは手近な紙)に四角を描いてください」
「そうしたら、その上に円を三つ書いてください」

・・・・・・・

出来ましたか?

やってみたかたは手近な人と紙を見せ合ったり、意見を交換、或いは、おぼえておいて後で誰かにやらせてみてください。
もちろん同じ場合もあるかと思いますが、四角と円の配置や大きさが人によってちがうことでしょう。私たちはこれを同じテーブルや近くの人と紙に描いたのを見せ合い、それを認識しました。

違いには先述したまとめのように、宗教や文化、生活環境など様々な要因がありますね。他にも同性婚の家庭や、片親の例も出されていました。

ただ、実際には条約に規定された権利がまだ実現されていない現実もあるようです。

▼トロントにおける違いを前提とした育ちと学びを支える地域のエコシステム
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▷カナダ オンタリオ州 トロント
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%83%88

▷武蔵大学の武田信子さんも「社会で子どもを育てる」と題し、トロントについて書かれています

社会で子どもを育てる―子育て支援都市トロントの発想 (平凡社新書)

社会で子どもを育てる―子育て支援都市トロントの発想 (平凡社新書)

  • 作者: 武田 信子
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2002/11
  • メディア: 新書



オンタリオ州の理念として以下の3点をあげられていました
・Social inclusion
・Everyone has different, everyone has special needs
・Nobody is perfect
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▼トロントの文化的背景(資料引用)
・人種のモザイク
・カナダには100人以上の民族と150以上の言語
・トロントはその中でも積極的に移民を受け入れてきた(人工530万人のうち約半数が移民)
・移民、離婚、病気など様々な理由で孤立する家族や子どもはシングルペアレント
・様々な背景の中で生まれたいわゆるマイノリティへの視点と「Ecological Model(生態学的モデル)」
・児童福祉法から子ども家庭サービス法へ
引用おわり

▼育ちの環境を考えた様々な視点
これは以下の3点を出されていました。これらは公教育に導入はされているものの、全てではないといったところが課題とも。
・ペアレンティング教育
16-21歳の若い親を対象にしたクラス
▷日本にも「親業」というプログラムがあるみたいです
http://www.oyagyo.or.jp/

・Nobody’s perfect program
妊娠後に全家庭に本が配られるようで、もともとは親の孤立や育児困難から虐待に至る予防といった視点から始まったようです。(資料参考)

・ルーツオブエンパシー(資料引用)
4-14歳を対象とした共感教育
コーディネーターと親と乳児が学校に通う
引用おわり

▷Roots of empathy(英語サイト)
http://www.rootsofempathy.org/

▼施設等の紹介
他にも具体的な施設やサポートを紹介された。ここでは名前にとどめるが、詳しく知りたい方は武田信子さんの著書か以下のサイトを通じて小澤さんにコンタクトをとってみるとよいかもしれない。

▷asobi基地
https://www.facebook.com/asobikichi/info
ページ内引用
<モデル>
カナダで特徴的な子育て家庭支援システム「ファミリーリソースセンター」
http://www.jfecr.or.jp/kiyou/h20_37/t1-4.html
引用おわり
・施設型保育/家族支援
・家庭型保育
・ファミリーリソースセンター
・Healthy babies Healthy Children Infant Toddler Development Program
・Better beginnings-Now CAPC

ざっくりだが、後半3つについて補足。
・ファミリーリソースセンターは家族の孤立化を防ぎ、家族のwell-beingを目的として生まれたもので、オンタリオ州からの助成を受けている施設。カナダ全土では2000カ所以上、オンタリオ州では450カ所あり、その役割は大学、家庭、児童相談所、州を繋ぎ合わせていくものだそう。

・Healthy babies Healthy Children Infant Toddler Development Programは、妊娠中の全ての家庭(妊娠中〜6歳)に対し、家庭訪問を行い、保険師とHome visitorによるスクリーニング(ふるいわけ?)をする。統一された質問用紙には例えば以下のようなものがある。①タバコは吸いますか?②妊娠中の母親学級にはでていますか?③親の教育レベルなど。

・Better beginnings-Now CAPCは妊娠期〜6歳までを対象とする機関で、特にハイリスクの家庭を対象としている。例えば言語問題、親の病気、子どものハンディなど。外部の多機関、学校、専門家との連携を密に行っているとのこと。


他にも子どもの権利擁護センターというものがあり、全ての子どもたちが自分たちの権利を侵害されたときに相談できる機関として機能し、社会的用語のもとにある子どもや、リスクの高い子どもたちへのプログラムや、25歳までの自立に向けたサポートを行うもの。(資料参考)

▼公教育について
▷カナダの教育制度
http://www.ceacanada.org/canada/canada3.htm

公教育で大切にされていること(資料より引用)
・多様性の尊重
・人権の尊重
・個々の発達や特徴にあわせた個別性
・家庭との密な連携
引用おわり

オンタリオ州では特に移民が多かったことなどから、一般クラスとスモールクラスを行き来する個別教育計画が実施されたようだ。

▷オンタリオ州の教育ガイドもネット検索で出てきた。
torontoshokokai.org/Image/OntEdu.doc


▼課題(引用)
・補助金がでるが、保育園、ベビーシッターの料金が高い
・相対的貧困が増える中、リスクのある家庭が増えている。(10代ホームレスの増加)
・約8%の学校にいけていない子どもたちへの介入困難さ(中等以降は学校を選択しない人の割合が25%に増加)

▼感想
子どもの権利という観点とカナダトロントの社会的事例はとても有益なものだった。子どもの学びや育ちは大きく環境に左右され、その環境を構成するのは、大きくいってしまえば社会そのものだからだ。学校ー家庭ー地域の連携とはよく言われているが、その社会的事例がここに出された価値は大きい。日本にも近年フューチャーセンターなど、市民のプラットフォームが出来始めたが、ファミリーリソースセンターなどこのようなものが発展していき、いずれも孤立化せずにつながっていける地域づくりの一つのモデルとなるだろう。そういった意識を持っている地方政治家の方々も出始めている。政治・行政・市民のまずは意識のある人たちが今一度振り返り、それぞれの地域の発展につながっていくきっかけとなればこの講演、ひいては本ブログにおいても幸甚だ。
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▼全体の考察に引き換え、ナイス自由塾や個人で実践できそうな当日浮かんだアイデアのなんでもメモ(順不同)ほぼ私用メモ。
・違いのアクティビティー 「四角かいて円かく」
・子どもの権利ってなんだろう、と対話テーマ
・ペアレンティング教育。これは大森教室のときに「親学ゼミ」と称し、好評を博したのでこれに近いものの開催。例えば、イベントとしなくても、塾保護者さんを対象とした親学サークルを午後クラスのない日に実施するなど。
・親学サークル、或いはスタッフ勉強会でアサーションを学び合う
・カナダ発表時にあった、ハンド評価(仮称)で、いま取り組んでいるところで5つわからないところがあったら一つ立ち戻るという考え
・家族と塾がチームになっていく。ゆくゆくは学校や地域ともつながる。方法はあと。
・うちで使ってるすららはやっぱりすごい。学びの体系化や管理において先進国でリードしている。
・現在の自分の学びの状況の可視化があってもよいかも。これは進捗状況ではなく、心理状況。よく学べている、まあまあ、ちょっとうまくいかない、など。メモ 必要はないかもしれない。
・学習プランの工夫。現在すららのデータベースを中心にしているが、現状をみるともっと基礎力を大切にしたい生徒も見受ける。クラス時間とは別途、個人面談をシステムとして組み込む。たとえばサークルの前後15分など。要検討
・保護者さんのまきこみ。負担のないものにはしつつ、何かお互いにとってより良いものを模索していきたい。イエナプランのワールドオリエンテーションも参考にできる
・ITリテラシーの学び合いがあってもよいかもしれない


またこの御三方と再会し、教育の話について多いに論議談笑していきたい。
ありがとうございました。


そしてここまでの長編ブログもご拝読ありがとうございました。
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