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2012年 ユトレヒトサマースクール 参加レポート [オランダ教育/イエナプラン教育]

▼概要

期間:7月2日(月)~7月13日(金) 土日を除く10日間
場所:ユトレヒト大学

1stプログラム:
日時:7月2日(月)~7月6日(金)
【インクルージョン教育:クラスにおける特別支援を必要とする子どもとの関係
~有能でインクルシブな先生へ~】

7月2日(月)
09.00‐10.00 イントロダクション
10.00‐ 11.30 レクチャー:【オランダにおけるインクルシブ教育の歴史的展望】
12:00 ‐ 13.00 ランチ休憩
13.00‐ 14.00 グループ活動:【私たちがインクル−ジョンについて語るとき、それは何を意味するのか】
14.00‐ 15.00 フィールドワークの準備

7月3日(火)
08.00‐ 16.30 フィールドワーク:【インクルシブ教育を実践している2つの異なる学校への訪問
〜インクルシブとエクスクルシブのセッティング〜】
訪問学校:de Archipel ~Katholieke basisschool voor ontwikkelingsgericht onderwijs~
Olivijn

7月4日(水)
09.00‐ 10.00 フィールドワークの評価 討論
10.00‐ 12.00 ゲストレクチャー:【インクルシブ教育の個人的経験について】
12.00– 13.00 ランチ休憩
13.00‐ 14.00 プレゼンテーション準備:【仕事:先生のツールボックス】

7月5日(木)
09.00‐ 10.30 レクチャー:【特別な教育的ニーズ】
10.30‐ 12.30 プレゼンテーション準備
12.30‐ 13.30 ランチ休憩
13.30‐ 15.00 レクチャー:【インクルシブの状況における先生たちのクオリティー】
18.00‐22.00 ディナー

7月6日(金)
09.00‐ 13.00 プレゼンテーション
13.00‐ 14.00 ランチ
14.00‐ 14.30 コースの評価
14.30‐15.00 コースの修了


2ndプログラム:
日時:7月9日(月)~7月13日(金)
【オルタナティブ教育:オランダの学校にみるオルタナティブ教育
~子どもの発達における確信~】

7月9日(月)
09.00- 10.00 参加者の集い
10.00- 11.30 レクチャー:【オランダの教育システムとオルタナティブ教育スクールシステム】
11.30- 12.30 グループ活動:【様々なシステムについてのオリエンテーション:
先生の個性とプロフェッショナルな姿勢へ特別な注意点】
12.30- 13.30 ランチ休憩
13.30- 15.00 グループ活動:【フィールドワークの準備】

7月10日(火)
08.00- 16.00 フィールドワーク:イエナプラン校・モンテッソーリ校訪問
イエナプラン校:De Nieuwe Kring ~Jenaplan basisschool~
モンテッソーリ校:de eilanden

7月11日(水)
09.00- 10.15 レクチャー:【改善された学校での先生の個人的でプロフェッショナルな能力】
10.30- 12.00 グループ活動:【オプショナルテーマ:イエナ/モンテッソーリ/ダルトン教育】
12.00- 13.00 ランチ休憩
13.00- 14.00 グループ活動:【オプショナルテーマ2:イエナ/モンテッソーリ/ダルトン教育】

7月12日(木)
09.00- 10.15 グループ活動:【各オプショナルテーマの情報共有】
10.30- 12.00 グループ活動:【エキスパートミーティング・討論】
12.00- 13.00 ランチ休憩
13.00- 15.00 プレゼンテーション準備とフリートーク

7月13日(金)
09.00- 10.00 プレゼンテーション準備
10.15- 12.00 プレゼンテーション
12.00- 13.00 ランチ休憩
13.00-13.30 コースの評価
13.30- 14.00 コースの修了


▼オルタナティブ教育コースについて
このコースのテーマは特にイエナプラン、モンテッソーリ教育、ダルトンプラン教育の3点に焦点が絞られています。各スクールのエキスパートが私たちの教室へと集会し、レクチャーを交えながらグループワークとディスカッションを重ねていくという方針。初日はオルタナティブ教育全般の概要とイエナ・モンテッソーリ教育に関するレクチャー・ディスカッションが行われました。第1週目はオランダ人10人、日本人2人とメキシコ人1人の構成でしたが、今回は、ギリシア人3名、オーストリア人2名、日本人2名、メキシコ人1名、オランダ人1名と国際色豊かなクラスになり、ギリシアとオーストリアから来た彼女ら5名は現役の教師、その他も教職志望或いは研究者といった構成です。各国の事情を交えた討論は一つの共通項を持ちながらも、実に様々な方向へと発展して行った事が鮮明に思い出されます。具体的には、オーストリアではこのようなオルタナティブ教育の考えや実践は難しいと批判的なアングル、ギリシア人からは可能性はあるので是非とも実践してみたいという意見、先週からの友人でもあるオランダの教職志望者は率直な疑問点をサークル内で投げかけ、メキシコの若い元幼稚園教諭からはそもそもそういった考えが全くないことと国の教育事情、教職志望の私と教育研究者である日本人からは日本におけるオルタナティブの認知度と世間的評価の提言というようなものでした。


▼イエナプラン校の訪問
実に様々な議論が交わされた初日でしたが、二日目には早速アムステルダムにあるイエナプラン校「De Nieuwe Kering at Diemen」と、モンテッソーリ校「De Eiland」への訪問です。今回私は3つの視点を設けて、それらの点から学校を観察しようと試みました。1.スクール全体のデザイン、2.スタッフや子どもの規模、3.学校校舎自体のスケールです。何故ならば、授業内容やシステム等に関してはリヒテルズさんの著書や協会のニュースレター、各体験者のレポートに詳細が記述されていることと、スクールデザインの面から様々なものと比較をしたかったからです。授業については7・8学年(11・12才)のワールドオリエンテーションを中心に数クラス視察。まずは学校スタッフの方にスクール全体を一通り案内をしていただき、先生たちとの簡単な質疑応答の時間。後に私たちは1時間ほど自由見学の時間を頂いたので、日本人クラスメイトと協力して校舎全体の記録とワールドオリエンテーション授業1コマの全貌の視察をすることにしました。情報をシェアすることでより多くの体験が出来た有意義な時間でした。


▼スクール全体のデザインについて
校舎全体の規模は日本の学校と比べても大差はありません。唯一決定的に異なるのはデザインです。これはイエナ以外の学校にも当てはまる事ですが、オランダ人たちは常に「良いデザイン」を追求していると思います。この場合の「良いデザイン」とは、時間・空間・道具のそれぞれを意味し、それらが「快適」「機能的」であることを指します。余分なものは徹底的に削ぎ落し、シンプル、そして耐久性と安全性が重視され、そこに見るものの印象を決める色彩が工学的・心理的に配置されます。以下はそれぞれの特徴です。ローズガーデンの設計がほとんど体現されていました。

▷クラスルーム
・グループテーブルは自由なフォームで組まれている
・教室内には必ず観葉植物等の緑が取り入れられている
・道具置き場があり、常に整然と整理されている
・各教室(校舎全体にも)に大きな窓が取り入れられるため、自然光で明るい
・また、電気は必要最小限の使用にとどめられている
・クラスごとに異なるリビングデザインはもちろん、部屋の形自体も様々
→例:四角、しりすぼみ型、くの字型、台形など
・インストラクションテーブルとグループテーブルにわかりやすく分かれている
・サークルスペースも教室によっては最初から設けられているが、机(主にインストラクションテーブル)などを移動して作られることも多い。後者の方が一般的
・廊下も教室の一部として使われることが多い。
→いたるところに学習出来るスペースやPC、そして図書スペースがある。
・各フロアには必ずスタッフのいる部屋があり、オープンである
・生徒個人の荷物置き場は教室外。一人一つのフックスペースが与えられ、各自使用
・上履きがなく下足ロッカーはなし。しかし校舎全体、床面も清潔感に溢れている
・各教室、先生のレクチャーやプレゼンにスマートボード(電子黒板)が大活躍
・非常に多くの学習マテリアルが教室内にある(計算・言葉など)
・教室内のアイテムは安定で頑丈な設計
→イスの重心は低く、脚の形も垂直ではなく少し開かれた形で強固に作られているため倒れにくい。またイスの背もたれに寄りかかりロッキングチェアーのように使用することは日本のイスに比べて困難である。机も同様であり重心は低く重めに作られている。そのため、それらによって事故や怪我をするというようなケースはおそらく少ないと思われる。大人でも机を投げるようなことは困難。小さな丸イスにいたっても同様である。
・リビングルームとしての教室:サークル会話を除く授業内では、子どもたちの自主性が保証されていた。何者かによってイスと机に縛られるということはなかった。


▷校舎(内側)
・間仕切りが少なく開放的。また廊下の中央には大きく三角形に確保されたスペースがあり、舞台が設けられていてアクティビティースペース、リラックススペース及び通路として用いられている
・死角が限りなく少ない
・廊下のさりげないところに落書きスペースとその道具がある
・とにかく自然光がいたるところから差し込んでくる設計なのでいつでもどこでも明るい。照明は強くない明るさで自然光の補助をしている程度。校舎内に光を吸収する素材が少なく、床面。壁面などが暖かく落ち着いた白とオレンジを基調に作られているので心地よい明るさが常に保たれている
・トイレは普通の家と同様、個室で男女別に構成される。便器、便座が並んでいるという光景は見られなかった。数は多くない。メイン校舎内にはおそらく4・5カ所といったところ。自由にトイレに行くことが出来るということで400人ほどの生徒がいるこの学校でも機能しているのだろう。また建物の設計上、画一的な時間割は不可能
・小さな相談室がある。少し奥まったところに設けられているためプライベートは確保されている。窓と扉の工夫(曇りガラス扉で下部と上部は通常のガラス)により息苦しさを感じない
・1階にも2階にもスタッフは常駐している。またそれらの部屋は基本的に扉はオープンであり、ガラス張りであるため廊下から誰でも確認出来る。大概においてオランダハウスの窓枠構成はオープンである。街並みを散策すればほとんどの家の中を確認することが出来るだろう
・生徒のデザインした看板や広告が随所に見られる
・図工室では、インストラクションテーブル以外のワーキングテーブルが窓際に一列に並べられていた。一人一人が集中して作業出来る、いわば職人たちの作業場といった形
・廊下に突然秘密基地のような小さな家がある。おそらく誰もが使用できるようになっていて、小さな書斎のような個人スペースが3・4部屋一緒になった家。高学年の子どもが利用するには少し狭いかもしれない
・教室によっては上記と同様のスペースを確保しているところもある。課題を終えた子たちが読書やリラックスなど思い思いに過ごしている
・強固な造りのリフト(車いす+一人程度の大きさ)が一カ所も設けられていて、障害を持つ子どもたちにも対応できるようになっている
・各教室前の扉にはクラスの名前とメンバーの写真が飾られている(時々インフォメーションも貼られている)。また扉は細長い窓枠を確保していて外からも中が確認出来るようになっている
・数は多くないが、本があらゆるところ、気の利いた場所にいつも配置されている
・プレスクール(幼稚園)クラスが校舎内に併設。他クラスよりも補助道具などが充実している。また校舎内に中庭が確保されていて、主にこのクラスの生徒が使用している
・中庭は2階にもテラスとしてあり、様々な栽培が行われている。興味深いのは、各花壇によってテーマが設けられていること。例えばピザガーデン(ピザに必要な野菜)がなどがあった。そのテラスからの眺めも心地よい。ベンチやイスも配置されている
・忘れ物・校舎内での紛失物などはまとめて玄関前の長机に置かれる
・メインエントランスは一カ所であり、広くはない
・校舎内にある小さな体育スペース(Gym)は大きな鏡と窓が配置されていてその狭さは感じない。また数は多くないが様々な用途で使えそうなアイテムが配置されている
▷校舎(外側)
・二つの校庭を持つ。
→第一校庭はエントランス前で町の小さな公園サイズ約20m×30m。大きなアスレチック遊具が一つ(下は砂場)、シンプルで低め設定の鉄棒が二つ、乗り物遊具が多種、木枠で区切られた庭園もある
→第二校庭は川にかかる小さな橋を超えると大きなプレイグラウンドと3・4ある固定遊具スペース。その奥には広々と構えた体育館がある
・小さな川とそれに沿った木陰道がある。自然観察の時間に使われたり、休み時間には子どもたちも自由に使用している
・いたるところにベンチやイスが設けられているのでどこでもくつろぐことができる。大人が送り迎え等で来た時も実にリラックスし、楽しそうにその時間を共有していた
・オランダは自転車王国でもあるゆえ、十分な駐輪スペースが設けられていた。

▷時間
・クラスごとに休み時間なども設定される。全校生徒が一同に会する機会は金曜日を除くとほとんどないのかもしれない
・休み時間の先生は実にリラックスしている。担当になっている先生二人が校庭に出て子どもたちを見守る。子どもと対しているときも落ち着いてはいるが、いつも集中力を要していた。リズミカルな時間設定は先生たちも集中力を継続しやすく感じる。スタッフの仕事部屋はあるものの、日本的な職員室のようなものは見られなかった。カフェ仕様。


▼ワールドオリエンテーションの授業について
テーマに沿ってサークル会話が行われ、その後は問題演習で各自席に着く。早く終わる子どもいればそうでない子どももいます。早く終えた子どもは遅い子どもの面倒を見たり、屋根裏等で読書をしています。私たちが見学していたからか、多少緊張感に欠けた子どもたちが集中力を切らすと即座に先生が毅然とした態度で指導を与えています。特筆すべき点は2点。最初の点は、生徒がテキストを持ってきて先生に質問や答えを確認してきたとき、先生はおおよそ自分で何とかしなさいといった態度で限られたアドヴァイスを与えていたということ。知ってはいても実践をしている場面に出会う機会はなかったので印象的でした。しかし、子どもたちには助けてくれる仲間や調べるための豊富なアイテムが揃っているため、なんとかやりくり出来ている。答え合わせは自分自身で行い、週に1・2回先生がチェックを行うそうです。次はテキスト。彼らは共通のテキストを用いて、それぞれ学年や能力で異なる課題に取りかかります。私が視察した7・8学年のクラスでは、同一の教科書内で文字の色分けがなされていて、黒:7年生、青:8年生、緑はさらにハイレベルなものに取り組む人のためにありました。


▼イエナプラン校「De Nieuwe Kring」の風潮
ここではコースの視察課題に沿って書き綴ります。

1.教育的風潮
●先生と子どもの関係
・先生はどのように子供たちに話しかけていたか
【基本的に落ち着いた態度と口調。注意を与える時は毅然とした態度で大声を使わずに指示する。常に集中している】
・子供たちは先生に対してどのように反応をしていたか
【基本的には信頼し合った様子でリラックスしている。日本との大差は感じない】
・クラスの雰囲気
【活気があり、且つ静か。子ども同士もお互いに尊重し合おうという空気感がある。クラス内は大きな窓からの自然光によって常に明るく、木目調のクラスの内装デザインが心地よい】
・クラスのルール
【視察したクラスにおいて、トイレに行くときサインとなる札を使用していたが、上手く機能しなかったために現在では特定の時間(レクチャータイム・サークルタイムなど)を除いて自由に行き来できるようにした、と担任の先生は語っていた】
・どのような種類の言葉によらないサインや振る舞いが見られたか
【特に際立ったものは見られなかった。ただし、クラスの集中力が低下したときなど、いずれの先生も「黙って集中して落ち着くのを待つ」という選択肢を持っていた】
・どのように先生と子どもの関係を表現出来るか
【率直に言えば、日本のよい小学校のクラスと大差は感じられない。とにかく先生は子どもの振る舞いや言動に真剣に集中し、時に厳格、時に寛容に接しているため子どもたちはある種の安心感と秩序をもって積極的に学校生活を楽しんでいるように思われる。教師と生徒、リーダーとメンバー。注意の仕方として、「これは良い、これは悪い」といった明言を避け、言葉数少なくその行いに対して考えさせる方向性を提示している】

●子供同士の関係
・オランダの子供たちの交流とあなたの国の子どもたちを比べると似ているか
【基本的には同じ。大きく異なるポイントは特に見られなかったが、先生の指導や国の風潮からか、お互いの違いを受け入れようとする姿勢が自然と強かった】
・制服はあったか
【なし】
・男子と女子の交流について
【視察した限りにおいて日本と特に変わりはなく、仲は良かったと感じる】
・休憩時間の子どもたちの振る舞いについて
【悪い事などする暇も場所もなく、とにかく遊ぶ事に集中している。校舎の全般のデザインが全ての子どもに対して何らかの刺激と環境を与えている】
・異なる文化背景をもつ子どもがクラスにいたか。またそれらの違いは役を果たしているか
【あるクラスでは、ナイジェリア・スリランカ・フィリピンからの子どもたちが在籍していた。特に違和感なく過ごしていたために紹介されるまで気づく事が出来なかった。またあるクラスではADHDの子やLDの子どもが在籍していたが、際立った存在には感じられなかった。これらはクラスメイトがお互い自然に認め合えている証拠ではないか】


2.教授法
・子どもたちはコースの本(テキスト)で仕事をしているか
【各自の仕事をするときには用いているが、基本的には先生の準備をしたもの/ことが中心。スマートボードの存在は大きい。何故ならば、多くの授業において様々な形で生徒・先生が存分に活用していたからだ】
・あなたは様々な教授法を見たか
【スマートボードを用いたプレゼンスタイル/先生は簡単に生徒たちの質問に答えない。自分で考えさせる、またはヒントとなるようなアドヴァイスを与えている/インストラクションテーブルで最後まで丁寧に指導/低学年クラスでは絵本の読み聞かせ】
・若い子たちの教育的シーンにおいて、どのシーンが遊びの学びを果たしているか
【グループ活動。また今回は視察できなかったが、金曜日のセレブレーションなどがそれに相当するだろう】
・子どもたちの仕事道具場所に注目するとき、彼らはどのように目を配らせていたか
【彼らは的確に目を配らせる事が出来ていた。その理由は、いつも同じ場所に整然と整理されているからだろう】
・どのような教授法、ツールを先生たちは用いていたか
【とにかくどんな場面であっても柔軟であり、また集中していた。具体的なツールとしては、イエナの特徴にもあるAuthenticity(真正性)から、理科の授業では本物の蜘蛛や虫などが教室内の虫かごに棲息していて、クラス授業内での観察に使用されていた】


3.組織
・クラス内でどんな設備を目にしたか、また調度品などの配置はどうか
【設備:スマートボード、安定した設計の机とイス、明るくて開放的な大きい窓、先生の机、インストラクションテーブル、虫かごや水槽、植物、時間割表等の掲示物、室内遊具、PC複数台(2〜5台)、時計、クラスの扉には各クラスの名前とメンバー全体の写真など。クラスによっては隠れ小屋も内包されていた】
・子どもたちはどのように仕事をしていたか
【異学年でグループは構成されているので、自然とお互いに助け合っていた】
・全体として学校組織についてあなたのアイデアや印象はどうか
【最初は学校規模に対して職員がもう少し多い方が良いと感じていたが、半日過ごしてみて非常にバランスよく構成されていると思うに至った。それは一言で言えば「無駄がない」のであった。また先生、生徒を含む自主性・能動性の意識が強いため管理を要する多くの人員を必要としないことに本質があるからではないか。私たちは何かことがあると、「管理が悪い」と咎められ、それを払拭するために深く考えもせずに人員を確保しようと努める。それでは問題の根本的な解決になってはいないのではないか】


▼意見交換と2コマ(午前・午後)のエキスパートコース
3日目となる水曜日はそれぞれの見解をもとに各学校の訪問によって感じたこと、意見などを話し合った後、二部構成の「イエナ・モンテッソーリ・ダルトン」の3つのエキスパートコースに分かれ、任意の場所において学びを深めるといった形が取られました。より多くを学びたい受講生たちから「何故分ける必要があるのか」といった意見もあがったが、後に討論やインターネット上で資料や情報の共有をするということで解決。午前、私はイエナコースを選択しました。そこではヤンセンの自転車やイエナの目的、またワールドオリエンテーションに関する詳細規定を学び、最後には実際にグループでプランを立案するというタスクが与えられました。先週から引き続きコースを共にしているオランダ人の友人と組んで「いかに障害をもつ人を受容していくか」とテーマを設け、どのようにワールドオリエンテーリングと結びつけて行くかということ実践準備体験をしました。8つの手順に従い構成を練って行きます。


▼8つの手順
・ステップ1:ゴールのセッティング
・ステップ2:最初の計画デザイン
・ステップ3:全グループでの最初のアクティビティー
・ステップ4:計画デザインの再構成
・ステップ5:どの方法やツールを私たちが使いたいのか
・ステップ6:アクティビティーの同伴
・ステップ7:仕事&プレゼンテーションと評価
・ステップ8:ゴールに到達することが出来たか

時間の関係もあり、私たちのグループはステップ3までの完成となりました。簡単にご紹介させていただければ、ステップ1:【子どもたち全員が障害を持つことを経験し、積極的に受け入れられる】、ステップ2:【期間:1ヶ月 内訳:体験のためのアクティビティーとディスカッション2週間、施設訪問、準備とディスカッション1週間、プレゼンテーション1週間】、ステップ3:【障害をもつこと:各グループごとに障害の種類を分けて体験し、それらを循環させて全員が一通り体験できるようにする。視覚不自由・聴覚不自由・肢体不自由など】。以降のステップに関してはこれに即した形でパートナーと議論を重ねて行けば導きだすことが出来ます。こういった準備関係のことは日本でもありますが、そのほとんど先生の責任で個人作成して行われますね。膨大な時間とアイデアに限界も見えてくるところが精神的負担にもなり、または一部の怠慢を産みだす原因にも繋がると思います。イエナプランでは生徒同士、生徒と先生同士、先生同士が協力し合い、ポルターモデルのように恊働し常により良いモノを求め、責任を共有していきます。そのような姿勢を私たちも見習いたいです。


▼モンテッソーリ教育のマテリアル
午後、引き続きイエナプランコースを選択したのですが、受講者が私1名ということもありグループワークが不可能であるためモンテッソーリコースにチェンジ。このコースでは豊富なマテリアルからそれぞれの遊び方・使用法と目的を学びます。モンテッソーリが如何に学習マテリアルにこだわり、より多くの子どもの成長願ったのかということを痛感させられます。誰にでもすぐにできるような簡単なものから、大人でも理解が難しいマテリアルまで実に多種多様あることに驚嘆しました。モンテッソーリ校に訪問した際にも感じましたが、マテリアルの数と種類は他のオルタナティブスクールと比べても群を抜いています。多くのスクールがこれらのマテリアルからインスピレーションを得たということも実感としてわかりました。


▼情報共有とプレゼンテーション準備
木曜日。私たちは前日に行われたエキスパートコースについて意見交換と情報共有を午前中に行い、午後は翌日のプレゼンテーションのための準備時間と講師とのフリートーク時間に充てられました。細かい点を2・3確認した後は作業に集中。今回イエナに関する情報は最小限であったので、思い切って協会のニュースレターと日本でのイエナ講習の経験にヒントを得ながらゲームを取り入れつつ、実践的にプレゼンテーションをすることに決めました。私の実践は以下の通りです。

1.サークルアレンジ:誕生日の順に席替え(1月を先頭に12月まで)・答え合わせ
2.アイスブレークゲーム:空気をボールに見立てながらお互いの名前を呼んでパス回し/ボールをケーキにチェンジ/受講者に新しい投げるものを決めさせる
3.イエナプランの簡単な歴史と概要を紙工作を用いてレクチャー
4.ヤンセンの自転車と4つのサイクルについてレクチャー
5.真正性(オーセンティシティー)「如何に本物が情報量と質を含むのか」について、本物のリンゴ・紙で作ったリンゴ・写真のリンゴで討論
6.まとめ

夜はコースの先生・生徒全体で食事会に。世間話や文化の違いに関する話から専門的な話まで実に様々な意見で場が賑わい、また先生方やクラスメイトとも連絡先を交換することも出来て非常に清々しい交歓の場と時間を共有することが出来ました。


▼プレゼンテーション
最後の日となる金曜日、私たちは午前最初の1時間をプレゼンテーションのための最終準備として時間が与えられ、その後は全員のプレゼンテーションという流れでした。学術的なものから徹底的にモンテッソーリアイテムを紹介したもの、国の事情を交えながらアイデアたっぷりに想いを綴ったものから多くの写真を交えながら体系的にプランを紹介したものなど、様々な個性が反映されてとても活気があり情報量も多く、且つお互いに意見を尊重し合い共有出来た貴重な時間となりました。全てを紹介したいところですが、今回は私の実践の結果についてのみお伝えさせていただこうと思います。

・サークルアレンジ:見事に正確な席順で並ぶことが出来た。また私の席を設ける予定はなかったのですが、親切にも聞いてくださったので誕生日を伝えて全員が座れることが出来ました。

・アイスブレーク:最初に空気を持って「これは何に見える?」と問いかけ。ボールという答えから「では何のボール?」とジェスチャーを交えて問いかけ。バレーボールという答えに行き着いたので早速パス回し。1回目はボールのイメージが弱く、その跡形がなくなってきたので一回返してもらい、「もう少しイメージしてみよう」ということを伝え、次は本物のようなパス回しに成功。自然な集中力がキーワードでした。次にボールをケーキにチェンジして回したところ、みんな思い思いに受け取って、手を舐めたり、中にはかぶりついたりする人もいましたが、慎重にパス回し。最後にケーキは食べてもらい、その人に「好きなものにチェンジしてください。でも、危険なものは避けてくださいね」と発言したところ、ネコにチェンジすることになりました。みんな可愛がりながらも慎重に回して一通り行き渡ったところで終了。

・レクチャー:ペーターセンの提唱からオランダでの発展。ヤンセンの自転車とリズミカルなサイクルをごく簡単にイラストでまとめて紹介。紙工作が功を奏し、注意を引きつけることが出来ました。

・真正性の討論:あらかじめ用意しておいた3種類のリンゴを用いて「このリンゴを使っていったい何が教えられるのか」を問いかけ。本物を提示したときには約3分の時間で15個以上のアイデアが出ました。トポロジーという専門的な意見から匂いや産地などについて。紙のリンゴで問いかけたところ半分以下の6項目、最後の写真では歴史・色の2項目が残りました。

・まとめ:本プレゼンテーションのまとめをパソコンを用いてプレゼン。終了。
・発展:次の機会には最初に見通しを提示してからプレゼンに臨みます。
・感想:すでに友情関係は出来上がっていましたが、それでも全員が楽しそうに笑顔でプレゼンテーションの時間を共有してくれたことからイエナプランへの自信を更に深めることが出来ました。


▼コースのまとめ 〜イエナプランに焦点をおいて〜
今回参加をして良かった点は以下です。
1.国際的な観点と他の専門オルタナティブ教育から比較検討、討論を実現出来たこと。
2.同じ方向性をもつ国際的な友人たちを各地に得られたこと。SNS発達のおかげでいつでも連絡をスムーズにやりとりすることが出来ます。
3.イエナプランを含む4つの学校へと訪問し、様々な知己を体験的に得られたこと。

更に今回私は以下3点に改めて感服しました。
1.リヒテルズ直子さんの著書や記述、講演が如何に有益であり貴重で詳細な情報源であるのかということ。
2.協会発行のニュースレターの類希な価値。
3.協会の会員の方々が協力し合って行っている日本でのワークショップの価値。
その理由は1週間授業を通してみて良く分かりました。何故ならば、少なくともイエナの概要・仕組み・実際についてはすでに上記3点から既に得ていたものであり、目新しい情報は特に見当たらなかったからです。また1週間という期間で、3つの教育に焦点を当てていたため20の原則までは紹介されず、ゲームやサークル会話の実践についても1・2点簡単に実践されただけでした。ゲームは【箱の中身は何だろう?】3・4人のグループで音を立てたり、動かしてみたりしながらその中身をみんなで推測してあてるものです。推測を言うときにはその理由も述べます。
今回リヒテルズ直子さんと協会からのお知らせでこのコースのことを知り、参加に踏み切りました。実際にオランダに来て思い至った点が2つあります。

・彼らは自然にスマートであり賢いということ
・彼らは本当に議論を好み、お互いの意見を一通りは尊重し合うという文化が根付いていること

上記2項目は風土的、地政学的特徴から構成されていると思います。実に有名な言葉ですが、「世界は神が創ったが、オランダはオランダ人たちが創った」とあります。彼らの歴史は常に水との闘いでした。常に恊働・協調し合わなければ生きて来られなかった、その事実がこの国の文化や気質に根付いていると今回強く感じました。また彼らは勤勉です。何故ならば人の話には熱心に耳を傾け、気が付くといつでもすぐにメモをとり、自分の意見を早速まとめあげます。その集中力のおかげか生産性は高く仕事も速い。終える時間もまた早いため16・17時以降はすでにリラックスしたプライベートな時間を過ごしています。17時頃大学から歩いて帰る道のりに(通常はバスを使います)いくつか幼稚園や学校があり、子どもの送り迎えするシーンにも多く出会いました。日本とは違い、平日であってもお父さんが自転車で送り迎えをするといったことが大変良く見られます。皆豊かに微笑んでいて、あぁ、この国の幸福とはこういうことなのだな、と想いを馳せました。先日の世界環境会議においてウルグアイの大統領がこんなことを言っていたことが記憶に新しいです。「発展は幸福を阻害するものであってはいけないのです。発展は人類に幸福をもたらすものでなくてはなりません。愛情や人間関係、子どもを育てること、友達を持つこと、そして必要最低限のものを持つこと。これらをもたらすべきなのです」(訳:内村明)私たちにとって本当の幸福とは何なのでしょうか。教育はいったい何をすることができるのか、またイエナプランはいったい何をもたらすのでしょう。一人一人の力は小さくもたくさんの可能性を秘めています。その可能性を開放しうるのは共有・協議・活動です。マイノリティーに甘んじることなく、その権利も主張しつつ社会の内側から私たちは共に発展していかなければならない、そう感じた今回の体験でした。

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