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2011年 プロオケ指揮者デビュー時に書いた曲目解説(変更後) [活動]

曲目解説に先立ちまして、当初予定していたトロンボーン協奏曲ソリストの宮林英介氏は現役の自衛隊員であり、先の災害からソロを辞退されましたことをご報告いたします。急な変更になってしまいましたことを心よりお詫び申し上げます。

芥川也寸志:弦楽のための3楽章
1953年作曲。初演は同年12月、カーネギーホールにてクルト・ヴェス指揮、ニューヨーク・フィルハーモニーによって行われた。
この曲は芥川の愛聴曲であったタンスマンの作品<トリプティーク>にちなんで名付けられた。全体は、その名のとおり3つの楽章からなり、第2楽章のみ<子守歌>という副題が付されている。
第1楽章 Allegro
ショスタコーヴィチなど、当時のソヴィエトの作曲家の影響を色濃く得た3部形式の楽章。ユニゾンで5小節の不均衡な主題が提示されたあと、この主題に散らばる音の粒子たちがバス固定のオスティナートに支えられながら自由に展開する。主題以外の展開が2小節ないしは4小節で均衡がとれているので、冒頭の主題はより際立つ。赤い革命を思わせるような煽動的で躍動的なBeat感とMelodyが音楽をよりエネルギッシュなものへと昇華させていく。
第2楽章 Andante <子守歌>
娘のために書かれた4/5拍子の子守歌。これも3部形式で書かれている。
息の長い平和で情緒あるフレーズを弱音機を付けた楽器で詠い継ぐ。途中から3拍子が混ざってくるが、基本的な性格は変わらずに音楽は里山に吸収されて行くような様相を表す。途中現れる楽器本体を手で叩いて音楽を表現するなどの試みも、古き良き日本家屋の匂いと奥行きの印象を与えている。そこに人があるから、子守歌がある。
第3楽章 Presto
しっとりとした前楽章に比べて一変、祭囃子の太鼓を彷彿とさせるような変拍子のリズムが遠くから鳴ってくる。音楽は密集した和音から次第に音域を広げて行くというように、弦楽合奏のダイナミズム表現にも趣向が凝らされていて、メロディーも低音から高音まで豊かに行き来をするなど終始魅力的である。途中祭の郷愁を漂わせるAdagioを挟み、すぐに変拍子へと復帰してフィナーレへとエネルギーを高めながら向かって行く。
作曲者のしなやかで強く、優しさとバイタリティー溢れる人物像の垣間見える名曲である。


助川敏弥:子守唄
2011年3月11日・・・私たちにとって忘れられない時となった。
この曲は宮城県仙台地方に伝わる子守唄である。
曲目変更に伴う新しい楽譜を探していたある時のこと、村方先生が過去に演奏なさった楽曲の棚からふっと私を見つめる楽譜があった。「助川敏弥作曲 子守唄」。何かに導かれるように楽譜を開き、その美しさと自然で流麗なるオーケストレーション、徹底的なまでにシンプルで計算された音の配置はスコアから音楽は煌びやかに浮き上がり、自由闊達で実に楽しそうにゆっくりと舞っていた。音楽の妖精に魅了された私は作曲者の解説を見て、その偶然と必然性にがく然とした。それは彼の地の音楽であったのだ。
この曲は眠らせ歌に分類されるもので、「ねーんねーろ」と唄い、むかいの山には犬がいるよ、ひとつがほえるとたくさんほえるよ、といった内容がひたすら繰り返される。幼き子が穏やかな夢の世界に誘われるまで。
現地でも忘れかかっているだろうこの美しい調べを、より多くの方々と共有すると共に、先の震災でお亡くなりになられた方への哀悼の意、被災地や復興者への慰めや励ましになることを願い、本日は演奏をしたいと想います。
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