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ソ・ラ・ノ・ヲ・ト アニメ紹介企画記事 [ソラノヲト/ソラヲフ]

pianonaiqさん主宰の、深夜アニメを紹介するブログ企画記事に投稿をしました。
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http://shinyaanimewalker.blog.fc2.com

こちらでもレイアウトは簡略化したものになりますが、共有させていただきます。

作品NO.43 『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』
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2010年1月~3月
テレビ東京、他
全12話+OVA2話/アニメオリジナル作品
放送枠:アニメノチカラプロジェクト
ジャンル:ドラマ・日常・ミリタリー・青春・音楽・戦争

監督:神戸守
シリーズ構成:吉野弘幸
キャラクター原案:岸田メル
キャラクターデザイン:赤井俊文
音楽:大島ミチル
アニメーション制作会社:A-1Pictures

<キャスト(主要)>

カナタ:金元寿子
リオ:小林ゆう
クレハ:喜多村英梨
ノエル:悠木碧
フィリシア:遠藤綾

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「誰かが、もう世界は終わりだと言っていました。でも、私たちは楽しく暮らしています。第1121号要塞。この、時告げ砦で」

▼作品評価
傑作>名作

▼レーダーチャート(ネタバレ度含め、詳しくはpianonaiqさんのブログをご覧ください。(冒頭リンク)
世界観 95
演出  95
演技  85
劇伴  100
作画  90
引き  75
キャラ 90
脚本  90

▼ネタバレ厳禁度
★★★

▼見どころ
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「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」は、テレビ東京とアニプレックスが展開したオリジナルアニメプロジェクト「アニメノチカラ」の第一弾作品で、2010年1月から3月までテレビ東京系にて全12話が放送されたアニメです。それは近くて遠い未来、長い大戦によって人が減り、魚も海に住めなくなるようなゆるやかに衰退していく世界。しかし、そんな世界でも空には太陽が昇り、金色の楽器の音色が今日も街に響き渡ります。15歳の空深カナタは小さい頃に出逢った音楽を習うべく、軍に入隊を志願して仲間との日々が始まります。

▼作品の魅力
ソ・ラ・ノ・ヲ・トの魅力は何といっても総合力の高さと多彩な視座を持つところです。退廃した世界を美しく再現する映像美、どんな世界であっても元気に生きている人たちの日常と、その裏でドラマ性を感じさせる筋の通ったシリーズ構成、多くの人の考察を呼び込む現代と地続きある歴史と地政学のある世界観など、観るものを自然と作品の世界へと引き込む魅力があります。また、多脚戦車をベースとしたユニーク且つ淘汰され混同されてきている世界観を踏襲したミリタリー設定、キャラクターの息づく様を感じる独特の間とそれに寄り添った撮影カット、アメイジンググレイスを物語のキーとし現代との地続き感とファンタジーを融合した作風のオリジナリティーもあります。さらには、まるで吟遊詩人が詩譚を紡ぎ出すかのようなドラマ性と世界描写に優れた音楽、今をときめく豪華声優キャストが集結して彼女らが体当たりで演じ彩られてきたキャラクターたちと、ミリタリーファン・制作ファン・音楽ファンや声優ファンにとっても充実した作品となっています。日常アニメとしても楽しめるので、自由なときに好きな話数を観返したり、人間賛歌の叙事詩としてどっぷり世界に没入したり、家族で観るアニメとしてリビングで子どもやパートナーとゆっくり鑑賞したり、人生に迷ったとき欲しい言葉を探したり…と、わたしたちの生活に寄り添うことが出来る作品です。
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▼映像美
オリジナルアニメーションとして長い大戦(大断絶)後の荒廃し緩やかに滅亡へと向かう世界観を表現するため、スペインにある世界遺産の都市クエンカを舞台のモデルに選んでいます。クエンカは美しい古都で、「歴史的城塞都市クエンカ」としてユネスコの世界遺産に登録されています。それを徹底的な取材と歴史考証に基づく細かい美術設定により、リアルな生活感を背景に描く静かで美しい映像が1話から最終話まで淡々と描かれます。
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▼シリーズ構成・脚本
本作を担当した吉野弘幸は機動戦士ガンダムSEEDシリーズや終末のイゼッタといった作品など多くの作品をこれまでに手がけてきていますが、今作ではオリジナル作品ということで、辺境の忘れ去られることもある国境警備隊、第1121小隊の所属する要塞、通称時告げ砦を舞台に設定しました。退廃した世界の中で軍に所属する少女たちの日常を描くことに注視しているので、戦闘や戦争に関する描写は最小限に抑えられ、そういった密かな緊張感の中でも世界は感ずる心のままにある、といったことを主人公の空深カナタを中心としたキャラクターの視点から描き出しています。
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▼世界観
現在の世界と地続きで西暦2250年頃の世界と設定されており、過去の世界をイデア世界とし、文献などの文字はイデア文字(日本語)が使用されていたとしています。現在第1121小隊の駐屯する水とガラスの街セーズにおいて使用されている文字はフランス語が使用されています。過去の遺物(兵器などのシステム)は英語表現をされることがありますが、敵対するローマ軍はドイツ語を使用しているなど、過去にあった大戦によって文化文明の淘汰や混在されている様子も描かれます。わたしたちから見れば文化的な混乱がある世界ではあっても、当のセーズの街の人たちは元気に生きています。物語の中で街の人たちとの関わりや生き方が描かれる場面がありますが、ソ・ラ・ノ・ヲ・トという作品世界の巧妙さは歴史を鳥瞰するマクロな視点と、主人公たちだけでなく1人の街人の人生を描くようなミクロな視点を短い1クールの中に表現しきっているところにあります。
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▼ミリタリー設定
第1121小隊はピンクの兵科章の戦車小隊として、戦車長、砲手、操縦士、通信手で構成されています。小隊長のフィリシア・ハイデマン少尉を中心に、喇叭手(ラッパ)兼通信手の和宮リオ曹長、整備士兼操縦士の寒凪ノエル伍長、砲手の墨埜谷クレハ二等兵、喇叭手兼通信手兼装填手空深カナタ(二等兵)が隊員として物語を動かしていきます。また多脚戦車が世界の主流であり、過去の時代に造られたタケミカヅチを技術結晶の最高峰とし、そこに追いつこうとする技術展開において造られた多くのオリジナル多脚戦車が複数存在しているので、最終話にて目撃することも楽しみにできると思います。なお技術力の復興は軍事力を中心に行われているので、一般市民生活は20世紀初頭がイメージされています。その他軍服や階級章、武具や砦内の備品などについて考察を重ねていくのも面白いのではないでしょうか。
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▼キャラクターと声優
カナタ(CV.金元寿子)、リオ(CV.小林ゆう)、クレハ(CV.喜多村英梨)、ノエル(CV.悠木碧)、フィリシア(CV.遠藤綾)がメインキャラクターとして物語が紡がれていきます。トランペットに憧れて、喇叭手になろうと新人のカナタが軍(第1121小隊に配属)に入隊したところから始まります。この作品で本格デビューとなった金元寿子にとっても思い入れの深い作品であるようで、最近のインタビューでも話題に取り上げています。彼女らは脚本の妙も相まって、作られた言葉ではなく、そこにある言葉と自分の言葉によって常におしゃべりをしたり対話を行っています。このことは声優陣に質の高さを要求することになりますが、各キャラクターの個性があぶり出され、より確かな実在感がそこに生み出されています。もちろん、金元の明るくのびやかな声、小林の演技、喜多村のアクセントある表現、ボクっ子としての悠木、包容力と安定感ある遠藤など、声優個人に焦点をあてても楽しめると思います。
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▼注目話数
日常ものとして、視聴者の方が何を求めるかによって注目の話数は異なります。なのでここでは、ドラマの転換点である第10話を取り上げます。
第10話は、これまで描かれてきたどこか緊張感がありつつも緩やかな日常からいよいよ脱却し、終盤に向けて物語が大きく動き始める話数です。
注目話数としているポイントは2つあります。一つ目は今までさりげなく伏線的に描かれてきた事柄が、いよいよ本筋となってつながりを見せ、最終話へ向けてつながりを持って行くところです。1〜3話はキャラクターや作品の紹介話数、4話〜7話は紹介も含みつつ、世界観と歴史の共有話数、8話頃から日常を中心としつつも政治情勢について少しずつ描かれていき、この10話ではそれらを前提とした「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」の物語が初めて展開されていきます。日常系アニメとして1話ないし3話切りを考えている視聴者の方は先にこの10話のBパートを観てみるのもよいかもしれません。ただし、ネタバレもありますので悪しからず。
この話数以降事態はセーズの街を越えてきな臭くなり、最終話ではミリタリーの設定が生かされる形となっていきます。もう一つは「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」というタイトルを言葉でなく実感できる場面があるからです。これも最終話まで観るとより納得のいくものになっていくのではないかと思います。
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▼制作スタッフ
【監督神戸守×シリーズ構成・脚本吉野弘幸】
監督の神戸守は「風の谷のナウシカ」でアニメの制作進行でデビューし、様々な種類の作品を手がけてきました。近年では2004年「エルフェンリート」を監督し、世界中からファンを獲得したことなども有名です。シリーズ構成・脚本の吉野弘幸は戦争物を多く扱う脚本家であり、1クールの中に日常ものをベースにした歴史ものを作り上げるという点において優れているように思われます。未回収の設定もそれなりにあるがゆえに雰囲気アニメとして捉えられることもありますが、ソ・ラ・ノ・ヲ・トがオリジナルアニメーションとして何を表現したかったのか、という点について神戸守と相性よく展開できたのではないでしょうか。アニメで描ききれなかった部分についてはコミカライズの漫画版「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」(著:神馬耶樹)でも補完されています。この作品を好きになった方はこの漫画版も読んでいただくと、彼女らの心情変化や舞台裏を体験することができます。
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【岸田メル×赤井俊文】
また、キャラクター方面に目を向けると、原案にイラストレーターとして知らない人はいないであろう岸田メル、キャラクターデザインには「マギ」や「アイドルマスター」シリーズなどで活躍し、近年ではポーター・ロビンソンのMVを監督制作したことで有名な赤井俊文を迎えています。赤井は岸田の透明感ある女の子の本質を大切にしながら、自身が尊敬している堀口悠紀子(k-on!キャラクターデザイン)のエッセンスをもって丁寧且つ謙虚に描いていますが、時流の流れも相まって放映当時はk-on!のパクリと揶揄もされました。しかし、その生き生きした表情や実在感あるキャラクターデザインによって、物語に生気を与えていることは確かにいえるのではないでしょうか。
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【大島ミチル×フランス録音】
大島ミチルはドラマ・映画・アニメと幅広く音楽を手がける日本でも有数の作曲家であり、「ショムニ」や「天地人」、アニメでは「リトルウィッチアカデミア」など様々な作品を手がけています。本作ソ・ラ・ノ・ヲ・トでも音楽を手がけており、東京とフランスを往復して音楽制作を行っていました。作中によく描かれるトランペットはフランスナショナルフィルの名手の演奏でもあり、オーケストラは親交の深いフランスでの録音がされています。作中印象的に歌われる挿入歌もフランスのギタリストによって作られています。神戸守監督の意向により無国籍音楽で少人数編成のオーケストラで録音がされ、作品に色を添えています。音楽のもつ色に気持ちを傾けてみることもよいでしょう。
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【Kalafina×戸松遥】
OPテーマである「光の旋律」は、梶浦由記がプロデュースすることでも有名なKalafinaが担当しており、その世界表現に一躍を買っています。
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またEDテーマ「Girs, Be Ambitious」は、作中でもマリアという役を担っている戸松遥が歌い、壮大な世界観の中において、乙女の夢をとてもポップな曲調で明るく表現しています。
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▼作品を観るには
ニコニコ・チャンネル
Amazonビデオ
ビデオマーケット
TSUTAYA TV
バンダイチャンネル
ほか(ここではリンク貼ってないので、「ソラノヲト 各チャンネル」で検索してください。

なおDAMのカラオケ「光の旋律」にはアニメの3話までを編集した映像が収録されています。
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▼最後に
冒頭でも書かせていただいたように、ソ・ラ・ノ・ヲ・トは非常に多彩な視座を持っているため、視聴者なりの色々な見方ができる作品です。筆者であるわたしは、DAMの映像で作品を知って視聴を開始しました。全話通して観た初見時の感想は、「音楽のもつ言葉とその力」です。「わたしのソ・ラ・ノ・ヲ・ト」は「音楽」とともにありました。しかし、ソラヲフというファン同士の交流オフ会を持つことによって、実に様々な視点があるのだなと感慨深く思うに至りました。ある人はキャラクター、ある人は世界観、ある人は喇叭手の物語、ある人は声優など。今回記事を書かせていただいた上で今までに交流をしてきた人たちの言葉を思い返しました。そんなとき自然とカナタの言葉が蘇ります。

「音は響いて、そして伝わる」

みなさんの生活においても「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」という作品が何かに寄り添っていってほしいなと思います。
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炎の乙女の祝福がありますように...
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▼追伸
もしも「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」が気になる、という方がいらっしゃいましたら今年2018年5月3日に全話上映会を都内にて行いますので、足をお運びください。非営利活動につき会場費と諸経費を人数割した金額にてご参加いただけます。目安は4000円前後かかりますが、大きなスクリーンでみることができます。
イベントページ
http://twipla.jp/events/298852


C94夏コミにおいて、フォロワーのハヤブサ(@NicoHaya398)さんと、高雄統子と山田尚子について語る本を出す予定です。(受かれば)
サークル名「さやえんどう」
書籍名「卒業文集vol.1」予定
#山田高雄文集
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